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正規分布

実際の分布は,データを集めて統計処理することで得られる. 理論的な分布としては, 正規分布(ガウス分布)

\begin{displaymath}
w(X)=\frac{1}{\sqrt{2\pi} \sigma} {\rm e}^{-(X-\bar{X})^2/2\sigma^2}
\end{displaymath} (15.5)

がよく知られている. 変数の定義域は $-\infty< X<\infty$である. 以下(15.9) で示すように, 右辺の因子 ${1}/{\sqrt{2\pi} \sigma}$は規格化条件 を満たすように選ばれている. 図 15.1には, 正規分布$N w(X)$を破線で重ねて記してある. 図に示すように,正規分布は平均値$\bar{X}$を 頂点とし,幅$\sigma$をもつ山になる. 実際に積分計算すると,正規分布は $\vert X-\bar{X}\vert \le \sigma$ の範囲に全体の68.3%を, $\vert X-\bar{X}\vert \le 2\sigma$$3\sigma$ の範囲内には それぞれ$95.5\%$$99.7\%$ のサンプルを含む. 式で表現するなら,

\begin{displaymath}
\int_{\bar{X}-\sigma}^{\bar{X}+\sigma}w(X){\rm d}X=0.683,
\...
...\
\int_{\bar{X}-3\sigma}^{\bar{X}+3\sigma}w(X){\rm d}X=0.997,
\end{displaymath}

である. 数値は(15.5)に固有の結果である.

正規分布に関する積分公式を以下に示そう. 基本になるガウス積分

\begin{displaymath}
I= \int_{-\infty}^\infty {\rm e}^{-x^2} {\rm d}x.
\end{displaymath}

は,平面極座標表示$r^2=x^2+y^2$ ${\rm d}x{\rm d}y=2\pi r{\rm d}r$を用いて, 次のように計算できる.

\begin{displaymath}
I^2=\int_{-\infty}^\infty\int_{-\infty}^\infty {\rm e}^{-x^...
...r {\rm d}r
=\pi \int_0^\infty {\rm e}^{-r^2} {\rm d} r^2
=\pi.
\end{displaymath}

つまり,$I=\sqrt{\pi}$である. 変数変換 $x\rightarrow \sqrt{a}x$($a=$定数)により,
$\displaystyle \fbox {
\(
\displaystyle
\int_{-\infty}^\infty {\rm e}^{-a x^2} {\rm d}x=\sqrt{\frac{\pi}{a}}
\)}$     (15.6)

が得られる.この式の両辺を$a$について微分すると,
(15.7)

が得られる.さらに,奇関数$x$の積分は
\begin{displaymath}
\int_{-\infty}^\infty x {\rm e}^{- a x^2} {\rm d}x=0
\end{displaymath} (15.8)

となることに注意すれば, 残る作業は式の書換えだけとなる. 例えば,(15.6)で$x=X-\bar{X}$とし, $a^{-1}=2\sigma^2$とおくと,
\begin{displaymath}
\int_{-\infty}^\infty
{\rm e}^{-(X-\bar{X})^2/2\sigma^2} {\rm d}X
=
\sqrt{2\pi}\sigma
\end{displaymath} (15.9)

となるため,正規分布(15.5)は 確かに規格化条件(15.2)を満たす. さらに,(15.8)で $x=X-\bar{X}$ と読むと, $\langle X-\bar{X}\rangle =0$,つまり, $X$の平均値に対し
\begin{displaymath}
\langle X\rangle =\bar{X}
\end{displaymath} (15.10)

が得られる.

平均からの 偏差 $\Delta X\equiv X-\bar{X}$ も重要な量である. 定義により,偏差の平均値は $\langle \Delta X\rangle=0$であるが, 偏差の 2乗平均 $\langle (\Delta X)^2\rangle $ は正の定数値をとる. この定数値が分布の幅 $\vert\Delta X\vert
\simeq \sqrt{\langle (\Delta X)^2\rangle}$を特徴づける. 正規分布に対する結果は,次のように求まる.

$\displaystyle \langle (
\Delta X
)^2\rangle$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}
\int_{-\infty}^\infty
(X-\bar{X})^2
{\rm e}^{-(X-\bar{X})^2/2\sigma^2} {\rm d}X$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \sigma^2.$ (15.11)

第1式は平均操作 $\langle \cdots \rangle$ の定義であり, (15.7)で$x=X-\bar{X}$とすると第2式が得られる. 正規分布に限らず,左辺は
\begin{displaymath}
\langle (X-\bar{X})^2\rangle=
\langle X^2-2X\bar{X}+\bar{X}^2\rangle=
\langle X^2\rangle -
\langle X\rangle^2
\end{displaymath} (15.12)

と変形できる. すなわち分布の幅は, 2乗の平均 $\langle X^2\rangle$ と平均の2乗 $\langle X\rangle^2$の差で与えられる.

分布の散らばりの度合を表す$\sigma$ 標準偏差とよばれ, $\sigma^2$ 分散とよばれる. ある特定の値$X$の 平均値$\bar{X}$からの外れ具合を示す量として, 偏差値 $50+ 10 (X-\bar{X})/\sigma$ も用いられる. はじめに示した積分値により, 偏差値70以上の割合は 2.3% となる.


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OKABE Takuya 平成14年1月9日