next up previous contents index
: 例:物質の膨張率 : 膨張率と圧縮率 : 膨張率と圧縮率   目次   索引


熱膨張率

温度の本性を知らない人でも, 温度というものを感覚的に理解することはできよう. 体積や圧力と同様,温度は直接測ることのできる量である. どうして温度が測定できるかというと, 物質の性質が温度によって変化するためである. 最も簡単な温度計では, 温度の上昇にともない,物質の体積が膨張する性質を利用する. あらゆる物質は,それぞれ固有の 膨張率をもつ. 膨張率が問題になる状況としては,2つの場合が考えられる. 圧力を一定にしつつ温度を変化させる場合と, 温度を一定にしつつ圧力を変化させる場合である.

圧力$p$を一定にして, 温度$T$を変化させると, 体積$V$は変化する. 温度が微小量$\Delta T$だけ増すとき, 体積変化分$\Delta V$$\Delta T$に比例する. また,変化分$\Delta V$はもとの体積$V$に比例する. (大きさが2倍ならば,体積の変化分$\Delta V$も2倍になる.) そのため,$\Delta V$そのものではなく 膨張率$\Delta V/V$に着目し, 温度による膨らみやすさをあらわす係数 として 熱膨張率,あるいは 体膨張率

\begin{displaymath}
\alpha=\frac{\Delta V/{V}}{\Delta T},
\qquad (\Delta p=0)
\end{displaymath} (4.1)

を定義する. 状態関数${ V}(T,p)$を用いると,
\begin{displaymath}
\Delta V={ V}(T+\Delta T, p)-{ V}(T, p)
\end{displaymath} (4.2)

であるから,上の式は
\begin{displaymath}
{ \alpha}(T,p)=
\frac{1}{{ V}}
\frac{{ V}(T+\Delta T, p)-{ V}(T, p)}{\Delta T}
\end{displaymath} (4.3)

と書ける. 極限 $\Delta T\rightarrow 0$では, 偏微分係数の定義により,
$\displaystyle \fbox {\(\displaystyle
\alpha(T,p)=
\frac{1}{{ V}}
\left(\frac{\partial { V}}{\partial T}
\right)_p
\)}$     (4.4)

と表される.

体積$V$の代りに,密度$\rho $を用いるならば, 定義式(2.9)により,質量$MN$が一定のとき,

\begin{displaymath}
\frac{\Delta V}{V}=-\frac{\Delta \rho}{\rho}
\end{displaymath}

が成り立つため,(4.4)は
\begin{displaymath}
\alpha(T,p)=-\frac{1}{\rho}
\left(\frac{\partial \rho}{\partial T}
\right)_p
\end{displaymath} (4.5)

と表現できる. 右辺の負号は, 体積の増加$(\Delta V>0)$は 密度の減少($\Delta\rho<0 $)を意味するためである.

図: 常圧(1気圧)での,水(左)と水銀(右)の密度をセ氏温度の関数として示す. 左図では,氷の密度を矢印で示した.
\begin{figure}
\centerline {\epsfile{file=watertgif,height=3.8cm}
\epsfile{file=hgtgif,height=3.9cm}}\end{figure}




next up previous contents index
: 例:物質の膨張率 : 膨張率と圧縮率 : 膨張率と圧縮率   目次   索引
OKABE Takuya 平成14年1月9日