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例:物質の膨張率

理想気体の熱膨張率を求める. ${ V}(T,p)=NRT/p$を (4.4)に代入すると,
\begin{displaymath}
\alpha(T) = \frac{1}{T}
\end{displaymath} (4.6)

が得られる. 理想気体の熱膨張率は温度で決まり,圧力には依存しない. 常温(20$^\circ $C)に対し, \(\alpha=3.41\times 10^{-3}
 [{\rm K^{-1}}]\) が得られる. これは1$^\circ $C当たり0.3%の体積変化率に相当する.

常圧での水と水銀の質量密度を, 温度の関数として 図4.1に示す. 常圧とは1気圧を意味し, 圧力の基準としてよく用いられる. 水の密度は約4$^\circ $Cで最大となるが, 図から読み取れるほど顕著ではない. 代表点での数値を表4.1に示す. 常温以下では, 水の密度は 約1.0 [${\rm g/cm^3}$]と考えて問題ない. 100$^\circ $Cでは 約0.96 [${\rm g/cm^3}$]だが, これらに比べ,氷の密度は 約0.92 [${\rm g/cm^3}$]と目立って小さい. 多くの物質では, 分子が密に詰まることで, 液体より固体の方が密度が大きくなるのだが, 水は数少ない例外の1つとなる. これは水分子が「く」の字型をしており, 整列するとかえって場所を占めるためである. 図4.1から明らかなように, 水の密度の温度変化は一様ではないが, 水銀の密度は,ほぼ直線的に温度変化する. (4.5)によると, $T$-$\rho $曲線の負の傾きから 膨張率$\alpha$が求まる. $\alpha$が一定の水銀の方が, 温度計物質としてはふさわしいことがわかる. 図によると,$0^\circ$C付近を除き, 水の熱膨張率は温度とともに増加している. 気体の(4.6)とは対照的である.

4.1からも読みとれるように, 水銀の膨張率は 1.81 $\times 10^{-4}$ [K$^{-1}$],水の熱膨張率は20$^\circ $Cでは 2.1 $\times 10^{-4}$ [K$^{-1}$]である. こうして 代表値を比較すると, 密度の差にもかかわらず,水と水銀の 膨張率はほぼ同程度であり,理想気体に比べると約10倍小さい. つまり,気体は液体よりも約10倍ほど膨張しやすい. もっとも,水の膨張率は 3.98$^\circ $Cで0になり, さらに温度を下げると負に転じる. 負の$\alpha$も水に固有の性質である. 一般に,固体は液体よりも膨張しにくい. 例えば, ダイヤモンドの体膨張率は 約 $9 \times 10^{-6} [{\rm K^{-1}}]$黄銅は約 $6 \times 10^{-5} [{\rm K^{-1}}]$, 氷はセ氏0度で $1.6\times 10^{-4}$ [K$^{-1}$]である.

問 題
ファン・デル・ワールス気体(2.8) の熱膨張率を 温度$T$と比体積$v$の関数として求めよ. 定数$a=b=0$のとき理想気体の結果 が得られることを示せ.


表 4.1: 水の密度(常圧)
 
温度 ${\rm [^\circ C]}$
密度 [ ${\rm g\cdot cm^{-3}}$]     温度 ${\rm [^\circ C]}$ 密度 [ ${\rm g\cdot cm^{-3}}$]  
  0 (固) 0.917     20 (液) 0.99820  
  0 (液) 0.99984     100 (液) 0.9583  
  4 (液) 0.99997     100 (気) 0.598 $\times 10^{-3}$  
 
     


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OKABE Takuya 平成14年1月9日