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: 浸透圧 : 非理想気体 : 非理想気体   目次   索引

例:膨張する水蒸気

水蒸気がファン・デル・ワールス模型で 記述されると 仮定し, 臨界定数から定数$a$を評価する. (8.5)によると, 2種類の組合せを利用できるが, 実測値と(8.6)との不一致からも期待されるように, 両者は完全には一致しない. ここで得られる結果は,分子間力による効果の,およその目安と考える. 結果は, \(
a={9 RT_c v_c }/{8}
=0.3 [{\rm J\cdot m^3/mol^2}]
\) \(
a=3v_c^2 p_c
=0.2 [{\rm J\cdot m^3/mol^2}]
\) である.9.1

100$^\circ $Cにおける等温膨張により, 水蒸気の密度33.19 [mol/m$^3$](常圧,表 2.2) を半分にする操作を考える($\Delta n=-n/2$). 上の$a$を(9.7)に用いると, 自由膨張の際に吸収される熱量は,

\begin{displaymath}
\frac{\Delta Q_{\tiny\mbox{自由}}}{N}
=
3\sim 5 [{\rm J/mol}]
\end{displaymath}

となる.これは表8.1の蒸発熱に比較して, 水蒸気の約1%を液化できる程度にすぎない. これに対し, 準静的な膨張過程では 桁違いに大きな値が得られる. 理想気体($\Delta U=0$)を仮定すると, (5.4)により,

\begin{displaymath}
\frac{\Delta Q_{\tiny\mbox{準静}}
}{N}=-\frac{\Delta W_{\tiny\mbox{準静}}}{N}= RT\log 2
=2151 [{\rm J/mol}]
\end{displaymath}

となる. 上の ${\Delta Q_{\tiny\mbox{自由}}}/{N}$とは比較にならない.

ところで,上の2種類の結果 $\Delta Q_{\tiny\mbox{自然}}\ne
\Delta Q_{\tiny\mbox{準静}}$は, ともに共通の始状態から(体積2倍の)共通の終状態に至る過程での吸熱量である. というわけで,以上はとりもなおさず, 熱量$\Delta Q$は過程に依存し, 状態量の差としては表現できないことを具体的に示している. あるいは, 仕事と熱量の和 $\Delta W+\Delta Q=\Delta U$ は状態量${ U}$の差であるから, 熱量$\Delta Q$が不確定な理由は, 膨張仕事$\Delta W$が不定であるためともいえる. 例えば,完全に自由な膨張では $\Delta W_{\tiny\mbox{自由}}=0$だが, 容器壁を中途半端に支えることにより, 部分的に仕事$\vert\Delta W\vert$ ( $\le \vert\Delta W_{\tiny\mbox{準静}}\vert$) を取り出すことも可能である. この不定性が,仕事と熱の区別に曖昧さをもたらすことになる.

問 題
(9.3)と同様に,${ u}_2(T)$を ビリアル係数$C(T)$で表せ. 熱力学的には${ u}_0(T)$は決まらない.なぜか.



OKABE Takuya 平成14年1月9日